きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

深堀隆介氏の「平成しんちう屋」行ってきました

  

f:id:moffril:20180720222328j:plain

f:id:moffril:20180720222418j:plain

 

平塚市美術館で展示している「平成しんちう屋」に行ってきました。

透明樹脂にアクリル絵の具で金魚を描くスタイルで一躍有名になった深堀隆介氏。ネットで前々から知ってはいたけれど、なかなか作品を見る機会がなかったので行けてうれしかったです。

 

f:id:moffril:20180720215445j:plain 

市立美術館なこともあり、展示スペースはそこまで広くないけれど、見ごたえは十分。むしろ普段美術館に行くたびに「広すぎて疲れる……」と感じていたので、個人的にはちょうどよかったです。金魚というテーマのミニマルさにもぴったりだった気がする。

  

f:id:moffril:20180720222304j:plain

 展示室に入る前のスペースに飾ってあったこちらは、先日行われたイベントで深堀自身がその場で描いたライブペインティングだそうな…これをライブペインティングってものすごいな…。

  f:id:moffril:20180720222321j:plain 

既に何枚か貼った通り、透明樹脂とアクリル絵の具で生きているかのような立体的な金魚を創る作風がとてもユニーク。金魚酒に代表される枡に入った金魚だけじゃなくて、どんぶりやお弁当箱、筆洗などなど、いろいろなものに金魚が入っているのがおもしろい。2011年を境目に作品の質がガラッと変わっていて、12年以降は立体感がさらに増している。そのあたりの作風の変化を見比べたりしながら行きつ戻りつするのも楽しい。

 

f:id:moffril:20180720222436j:plain

 

樹脂の立体作品ももちろん素晴らしいけれど、個人的には平面の絵画がものすごいヒットした。「生きている」というよりも「金魚のかたちで命を与えられたなにかがそこにいる」という生の感触にゾワゾワする。


会場には縦横数メートルにおよぶ絵から数十センチサイズの絵まであったけれど、どれもこれも観察力が常人のそれではない。ヒレや尻尾の透明感とか、目玉のやわらかさとか、鱗のヌメッとした感じとか。

立体作品の中にいる金魚は「華やか」という言葉がしっくりきて、平面の絵画として描かれている金魚は「生きもの」という言葉がしっくり来る。金魚への強い愛を感じたし、その愛を餌にした金魚が優雅に泳ぐ様子がはっきりわかる。

 f:id:moffril:20180720222408j:plain 

なんというか、この人は金魚という生きものをじぶんの手で「作り直した」のだと思う。金魚というかたちを保っているし、実際これらは紛れもなく金魚なのだけど、ここにいた金魚たちは深堀氏の手によってしか存在し得ないんだろうな。 

 

f:id:moffril:20180720214906j:plain

 

平面の絵画はほとんど撮影できなくて残念。今アップしている写真は、最後の展示スペースにある最新のインスタレーション「平成しんちう展」のもの。ここは自由に撮影OKなので、ぜひカメラを持って行ってみてください。

 

f:id:moffril:20180720222354j:plain

 

展示スペースに一歩入ったところはこんな感じ。くわしいコンセプトなどは行ってからのお楽しみ。

 f:id:moffril:20180720222359j:plain

f:id:moffril:20180720222938j:plain

f:id:moffril:20180720222945j:plain

立体も樹脂以外にユニークなものが多くておもしろい。ものすごくおおきな金魚の骨格とか、瓦礫にスプレーで金魚を描いたような作品とか。思うに、この人は興味の方向性が少し違ったらめちゃくちゃイケてる生物学者になったんじゃないかと思う。芸術として表現し直すといういとなみと同じくらい「生きものを捉える」というのがうまい。いのちに対する敬意や畏怖が作品の所々から感じられました。

 

f:id:moffril:20180720215818j:plain

 

平日のせいか人はかなりすくなく、館内は静か。教会みたいな雰囲気の美術館だった。東京の商業的な美術館のスタイルを見慣れていたので、こういう雰囲気の美術館に久しぶりに入ってものすごくワクワクする。

 

平塚市美術館は駅からけっこう歩くので、バスで行ったほうが良いです。特にこんな炎天下の日々は……。しかし東京から往復3時間、交通費3000円をかけて行く価値はじゅうぶんにあります。おすすめです。