羊とメトニミー

過不足なし

みやかわくんとぼくりりが歌うaNYmOREは生々しさの種類がぜんぜん違うという話

ぼくのりりっくのぼうよみ、引退しちゃいますね。あと一ヶ月半。

引退発表をツイッターで知り、エエエエ〜〜〜〜〜〜!!!!!!と叫びながらその場でチケットぴあのサイトに音速でアクセスし、直近のライブチケットを光速で取って名古屋まで追いかけていったのが10月のこと。sub/objective時代からのファンだったので心底残念だけど、名義変えてまだ音楽を続ける気配がバリバリあるのであまり寂しくはない。もっとダサくて長い名前になっても変わらず応援している。死ぬまで応援してる。ちょう応援してる。

 

ラストアルバム「没落」が12月12日リリース。今も聴きながらこれを書いてます。曲は全体的に「ぼくはもう……」のライブで見たぼくりりみが強い。墓場でミラーボールが黒くビカビカ光ってて、ときどき土の下から腐りかけの腕が生えてきてうめいてる、みたいな。とりあえずみなさんも聴いてみてください。

没落での初出で個人的に気に入ったナンバーはもちろんいくつかあるんだけど、印象的だったのが「aNYmORE」。下記動画の2:40あたりから始まる曲です。

 

www.youtube.com

 

iTunesからはこちら

aNYmORE

aNYmORE

  • provided courtesy of iTunes

 

作詞作曲はぼくりりが担当、歌っているのはみやかわくん。ぼくりりの動画時代からの友だちだったとかそういうわけではないみたいで、今年の6月末にリリースされたaNYmOREの提供が初コラボっぽい。

 

この曲は、女の人が浮気した自分の恋人を刺し殺す歌なんだけど、みやかわくんのaNYmOREは、女の人が拘置所で刺しちゃったときのことを思い出してる感じ。若干ノスタルジーがかかっていて、記憶の靄をまとっている。その曖昧さがなんとも色っぽい。刺したときの手の感触ははっきり覚えているけれど、そのときの自分が何を考えて感じていたかはぼんやりと思い出せない。歌声とミュージックの調和から「生々しさが消えたあとの生々しさ」が完璧に再現されていて、初めて聴いたとき、みやかわくんほんとに人刺したことあるのでは?と思った。

 

で、没落に収録されているaNYmOREはぼくりり自身が歌っている。

aNYmORE

aNYmORE

  • provided courtesy of iTunes

 

ぼくりりの歌うaNYmOREは、なんというか、刺したてほやほや。目の前に男の死体、転がってる。手、血でべとべと。汗、頭からびっしょびしょ。息、めっちゃあがってる。刺し殺した恋人を目の前にして、これまで心の奥に埋めていた感情や見たくなかった光景を一気にバーストしてる感じ。

みやかわくんのは「刺し殺しちゃったけど、ほんとうに好きだった」という思いが混じっているのに対して、ぼくりりは「絶対殺す。もう、絶対殺す」という気持ちに満ち満ちている。なんという殺意……。

 

みやかわくんの歌声は確かに色っぽくて、ハイトーンが女性らしさを感じさせるんだけど、男性のなかにある女性らしさの、特につややかで湿った部分が全面に押し出されてこのかたちになっている感じがする。対してぼくりりは、男性とか女性とかではなく、歌によって彼の性別そのものが自在に変わる。これはaNYmOREに限らずなんだけど、ぼくりりはほんとうにそう。この曲は紛れもなく女性のぼくりりが女性としての心象を歌っていて、だからこそこの臨場感、という感じがした。

 

原曲とカバーを聴き比べて楽しむ、ということはよくやるけれど、音楽からビジュアライズされる情景にここまで両方生々しさが詰まっているのはあまり聴いたことがなかったのでめちゃくちゃ印象的でした、というお話。アレンジや歌い方が出来上がる情景の違いを生むのだろうけれど、歌う人の記憶とか、経験とか、人格とか、そういうのって歌声にどれくらい、どう影響するんだろう。こればかりは生身の人間で計測のしようがないのでわからないけれど……。

 

1月28日のラストライブ「葬式」、参列予定です。楽しみ。