汽水域

海水と淡水のあいだ

身体のつくりと踊りの話

趣味でサンバを踊っている。これがけっこう楽しい。最初は「月に1回レッスンに行ければ」くらいに思っていたが、気づけば毎日なんとなくステップを踏んだりリズムを口ずさんだりするようになっていて、すっかりサンバを身体に飼うこととなった。 サンバとい…

ルールの話

最近、仕事で手引きみたいなものをいくつか作るうちに、「ルールはどこを向くべきなのか」についてよく考えるようになった。「~してください」 「~しましょう」「~するようお願いいたします」という文字列を繰り返し打っていると、ふと「この言葉はいった…

時間を取り戻す話

祖母の認知症がかなり進みつつある。同時に、体力もずいぶん衰えている。病気をしているわけではないけれど、毎日ご飯を食べるとき以外はほとんどずっと眠っていて、少し起き出してもすぐにコタツでうとうとしてしまうらしい。5分前に言ったことも忘れてしま…

『ラストナイト・イン・ソーホー』の話

※ 具体的なシーンや物語の核心部に近づく内容に触れています。ストーリーには触れていません。観る前に多少ネタバレしてもいいよという人、観たよという人向けです。 『ラストナイト・イン・ソーホー』観てきました。前情報は「ホラーらしい」「ベイビードラ…

レッサー・ユリィの話

2022年美術館初めは、去年の秋から気になっていた三菱一号館美術館の展示へ。 mimt.jp もともと印象派の絵画、特にコローとかピサロの描く自然の風景画がとても好き。彼らの描く絵は、おおきな自然に似ている。そのなかにいると肺がひらいてたくさん息を吸え…

メイク・スロー・タイム

急ぎたくない。焦りたくない。慌てたくない。これまでの生活時間に、いいかげん疲れ果ててしまった。 もともとわたしはせっかちなので、絶えず頭のどこかが回っていて、気が休まらない。湯船に浸かってヘエーとなってるときでさえ、風呂から上がったあとのこ…

自己肯定感をブチ上げない2021

自己肯定感ブチ上げ、がトレンドっぽい。 「自分(たち)は最高にクールでブリリアントでグレイト!」みたいなのが流行っている気がする。なぜかはわからないけれど。kemioさんとか叶姉妹のお二方とかの影響だろうか。 ノリノリでブチ上げの自己肯定は、楽し…

かたちをして顕わるるもの

今日はたくさんの手仕事を見た。清澄白河で陶器の展示を見て、そのあいまに深川一帯の伝統工芸展も見た。軟質陶器、帯、すだれ、建具、表具、染、指物。実演もあった。ずーっと、ずーっと見ていられる。 ふしぎだな。ものにかたちはあるのに、技は人をしてし…

201018_diary

洗濯機は鳩と同じような声で鳴く。ククルク、ククルク、と、一つ目の音はややためらいがちに。そして残り時間はいつも嘘をつく。3分じっとしていたかと思うと、突然逆襲のように動き出して、残り時間がまとめて2分減る。 *** 「令和なんだから」という言…

たった一人に届きますように

仕事というものにあらかた慣れて初めて気がついたが、わたしはとにかく、大勢の人に向けて何かを呼びかけたり、はたらきかけたりすることが苦手だ。一社目で入った大きなメーカーでは商品企画職をしていたが(実際はすぐに辞めたので企画職の卵どころか受精…

「楽しいままで終わりたい」で、終わったのは何なのか

3年前、「楽しいままで終わりたい」という手紙を遺し、校舎から飛んだ中学生の子がいた。その子は亡くなった。 わたしは彼女の遺した言葉について、長いあいだ何も言うことができなかった。「楽しいままで終わりたい」は正しくも聞こえ、間違っても聞こえた…

山と身体の相性について

山登りが好きだ。18歳のときに人生初の山登りで富士山の頂を踏んで以来、なんとなくずっと山に登っている。たまに人と一緒に登ることはあるが、ほとんどはソロ山行。山に登るのは、山に会いに行くためだから。下界で会いたい人に会いに行くのに「ほかの人も…

なくならない拠りどころについて/映画『タゴール・ソングス』感想

tagore-songs.com 『タゴール・ソングス』観てきた。内容としては、1861年にインドに生まれたタゴールという人が残した歌が、現代のインドやバングラデシュでもいまだ長く愛され受け継がれていることを伝えるドキュメンタリー映画。およそ2時間のあいだ、体…

人間はもと、パンの赤ちゃんの千切れた破片

いまも毎秒膨張を続ける宇宙の端っこには、小麦粉をこねて作ったでかいパンの赤ちゃんのような塊があって、それが小さく千切れてはものすごい勢いで地球に飛んできて、そうやって毎秒地球の生きものたちが生まれ続けているのです。だから、わたしたち生命は…

何もしてないわけじゃないけど何もしてないって思っちゃう

自己肯定感が激・低下するタイプの不調に陥っているときは、とにかく自分のやっていることを過小評価しがち。いまです。動けずに床にうずくまっていると、何もやってない、何もできていない……という焦りが潮のように満ちてくる。が、実際のところ何もやって…

自傷行為をやめるのに13年かかった

登山と写真、踊ることが趣味。日課は軽い筋トレとランニング。朝型。夜は0時より遅く起きていられない。三食きちんと食べないとダメ。人と活発に議論をしたり、一人で突発的に旅行をしたりするのが好き。そんな人間が「自傷行為に13年間依存していました」と…

関心を装った支配について

他人の注意をひきたがる人は、どうしてすぐにわかってしまうんだろうね。という話を夕食の席で夫としていた。いわゆる、構ってほしい人。我われ人間は、他人が自分に対して向ける「注意をひきたい」を容易にキャッチできてしまう。 なんでだろう。なんでか、…

200608_diary

最近、日曜日にその週にかならずしておきたいことをノートに書いて、次の日曜日にそれがちゃんとできたかどうかを確認している。5つ、やりたいことを書いたとしたら、そのうちのひとつは〇、3つは△〇、ひとつはバツになっている。 バツのつく作業はだいたい…

我われは結婚指輪を作りたかった

わたしと夫はまだ結婚指輪を持っていない。結婚と同時期にやれ引っ越しだ転職だコロナだと重なり、暮らしにひととおりの安定感を保つのに精いっぱいだったからだ。 我われはアクセサリーがそこそこ好きだ。もっと言えば、愛せるアクセサリーというものを知っ…

高校生の皆さんへ

緊急事態であるいま、毎日さまざまなメディアからとてつもない量の情報に触れていることと思います。特に、政治や社会制度、特定の人物に対する批判や賞賛なども、数多く目にするでしょう。そのなかで、激しい言葉や極端な考え方に出遭うこともあるかもしれ…

ADHDを克服しようと思う

克服しようという気持ちで克服できるんかって話だけど、ひとまず本気で克服しようと思う。これまでいろいろな方法で「対処」を頑張ってきたけれど、ADHDでいること自体のストレスに対して、「対処」がそろそろ限界だと感じるようになってきたから。 一昨年、…

日記の書き方を忘れた

日記にそもそも書き方などない。天気を記録するだけでもじゅうぶん日記だし、心の内を切々とさらけ出すも日記である。「書き方がわからない」と思ってしまうほど、ことばがわたしから逃げてしまっている。 非常事態。ここ1ヶ月はずっと神経が張り詰めていて…

拝啓 健常な社会様 病をお許しいただけますでしょうか

最近、喘息、過換気症候群、不整脈という診断が下された。数年前からどうにも喉と胸のあたりがおかしく、昨年の夏頃からいよいよ深刻っぽくなったので、いろいろなところを検査した。結果、心的なストレスに極度に弱くそれが体に表れやすいことと、肺の機能…

200104diary_変な時間に寝て起きる

一昨日は3時に起きて海岸に日の出を見に行き、今朝は5時に起きて別の海岸に日の出を見に行き、そんなこんなで今日は夕方の6時に少し昼寝をしたつもりが、目が醒めたら深夜だった。みかんを食べる。変な時間に寝起きするのは時間感覚がなくなってすこし楽しい…

二人暮らしを始めたら、いよいよ逃げられなくなった

二人暮らしを始めた。人と二人で、暮らし始めた。暮らしを始めて少しして、ああもう逃げられないんだなとわかった。わたしには、わたしの胸には、あらがいがたい穴がある。 昔から、それはもうほんとうのほんとうに昔から、胸の真ん中に穴があいている。穴は…

山田くんは怖かったけれど、怒っている彼はうつくしかった

席替えがあるたびに、わたしは神さまに祈った。どうか、どうか山田くんの隣になりませんようにと。 山田くんは3年2組の問題児と目されていた。授業中はとにかく騒ぐ。大声でマシンガンのように喋り続ける。消しゴムをちぎって投げる。コンパスで前の席の子の…

安定は安心を連れてきてはくれない

「安定した企業に就職したい」と目の前の子が言う。どうして、と問うと、「だって、そうすれば将来安泰だから」。「安泰っていうのはつまり、何も心配しなくていいということ?」「そう」「安心できるってこと?」「うん。親も安心すると思う」「でも、いま…

フライパンから炒めものをじかに食べる生活

カブと小松菜を炒めたのをフライパンごと机に運び、鍋敷きを二重に敷いて、フライパンからじかに食べる。品というのはこういうところからなのだろうか。誰も見ていない家の中で炒めものをフライパンからじかに食べる女。せめて皿に盛り付けてはどうかと思っ…

東京で生きていくということ

東京を生きていくために必要な技術はいくつかある。他人と肩が触れ合うかどうかの電車に乗ったらすぐにポジションを確保しミニマルな動作でリュックサックを背中から前に抱え直す技術。スーパーのタイムセールの時間が近くなったらそれとなく店員さんの動き…

「一言もの申し上げたい欲」のためにセンシティブな話題を燃やす人間が多すぎる

銀座いせよしのポスターの昭和臭…本当にこれが東京コピーライターズクラブの新人賞?冗談…ハーフはペットじゃないし着物は自分のために着るんだよ。ドアを開けてくれた人の好意を「自動ドア」なんて失礼な言い方しないでくれ。「年収の高い男ならナンパされ…