きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

おまえは白馬の王子さまを待つだけで本当にいいのか

 

待つことが、けっこう苦手です。

だから、白いご飯は大好きだけれど、極限まで腹ペコのときの炊きたてご飯は苦手。熱くて食べられなくて、我慢できない気持ちが爆発してしまうから。

行列のできるナントカ屋さんも、あんまり得意じゃありません。「よし、今日は行列のできるナントカ屋さんにいくぞ!」という心の準備をしていれば全然平気ですが、お腹が減っているときにいつ食べられるかも分からないものを待つのは、あまり好きではないです。

 

 

どうやら巷には、白馬の王子さま、というのがいるらしい。

女の子はその白馬の王子さまを待つのがハッピーになるためのひとつの手段で、その王子さまに出会うために、日々自分の鍛錬を忘れないようにしなくてはならないとか。いや、ひとはけっこういい加減ないきものなので、そんなことを思って日々鍛錬に励んでいる女の子は少数派かもしれません。でも、別にそれでもいいと思います。女の子は可愛くてもブスでもみんな生まれつきプリンセスだってパパが言ってた、と、可愛い女の子が言っていた気がします。わたしも概ねそのとおりだと思います。

 

けどね

 

いや、だけどね

 

白馬の王子さまを待つのって、大変じゃないですか?

 

 

待つって、信頼がないと成り立たない、けっこうとうとい行為だと思います。

たとえば、もうぜったいに誰も来ない、何もあらわれない場所で、ひとは無意味に待つことはありません。いや、誰も来ない、何もあらわれない場所で待つとしたら、それはおそらく自分自身を待っているのだと思います。自分のなかのなにかが変わるのを待っているのかもしれないし、納得がいくのを待っているのかもしれない。けれど、自分以外のものを待つとき、ひとはかならず、相手に少なからず信頼と期待をしています。「かならず来る」と。あるいは自分を待っているとき、「かならず自分に出会える」と。

 

わたしは、たくさんのひとを簡単に信頼するのがあまり得意ではありません。それは、ひとに心をひらかない、という意味ではなく、自分の嗅覚にヒットしたひとのことは簡単に信頼できるけれど、そうでないひとに対して(言ってしまえば、いてもいなくてもあまり自分の人生に影響を及ぼさない、生活の中を通りすぎてゆくたくさんの人々を)信頼をするのが、とても下手です。ときにはとても近い関係になったひとですら、愛情と信頼が噛みあわなくて苦しく感じることもあります。

だから、わたしにとって見ず知らずの白馬の王子さまを待つという行為は、とても大変というか、あまり楽しいことではないように思えてしまいます。来るかも来ないかもしれない、しかも、どんなひとかすら分からない人を期待して信頼して待つのって、いったいどんな気分なんだろう。もし来なかったら?来てくれたとして、乗馬が下手で馬からよく落っこちるような王子さまだったら?乗馬の下手な王子さまと池の周りとちいさな林をお散歩して、「ここは僕たちだけの世界だね」なんて囁かれたら、わたしなら笑っちゃいます。わたしは、カッコイイ馬で北の大地まで駆け抜けたい。白樺の抱えきれないような森や、きらきら透き通る空気に触れたい。あとおいしい海鮮丼も食べたい。ウニとかボタンエビものってる贅沢なやつ。その道中にどんな暗くて寒い道があっても、キツイ上り坂があってもいい。

 

白馬の王子さまを待つより、わたしは乗馬を覚えます。

なんなら、マイホワイトホースを買うためのお金だって貯めちゃいます。

乗馬の練習中にときどき落っこちてひざ擦りむいたり、骨の一本二本折ったりしても、まあ別にいいです。いつ来るのか分からない、どんなひとかも分からない王子さまをただ待つより、ずっと。

 

先の可愛い女の子の言を借りれば、わたしだってきっと生まれながらにプリンセスです。今までは、自分がプリンセスのプリンセス枠からけっこう外れていることに落ち込んだり悩んだりすることが多かったのですが、最近は、いろんなプリンセスがいてもいいじゃないか、と思えるようになってきました。ふわふわきらきらしたドレスが似合う子も、ジーパンにパーカーの似合う子だっているはずです。待っているのがうまいプリンセスがいるなら、乗馬のうまいプリンセスだっていていいと思うんです。白馬の王子さまは、待つのがうまいプリンセスにまかせておけばいいかなって感じです。

 

わたしは、白馬の王子さまを待っているわけにはいきません。せっかちだから。ひざを擦りむいて骨折して、傷だらけになりながらやっと自分の馬を乗りこなせるようになって北の大地に走りだしたとき、気付いたら、横を併走しているナイスガイがいるかもしれません。北の大地まで傷だらけになりながら併走して、一緒においしい海鮮丼を食べてくれるナイスガイなら、信頼してもいいかな、って思います。そのひとこそが、きっとわたしの王子さまです。

 

 

21歳になって、半年ちょっと経ちました。まずは馬とお友達になれそうな服を探すところから始めなくては。