きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

高校生の皆さんへ

緊急事態であるいま、毎日さまざまなメディアからとてつもない量の情報に触れていることと思います。特に、政治や社会制度、特定の人物に対する批判や賞賛なども、数多く目にするでしょう。そのなかで、激しい言葉や極端な考え方に出遭うこともあるかもしれません。

教育の場で10代の人々と間近に関わっている身として、ひとつ、高校生の皆さんにお願いがあります。

インターネットに溢れる情報を見て、何も疑うことなく、「これはこうだ」と思いこまないように、どうか気をつけてください。

たとえば、有名な誰かやが「政治とはこうあるべきだ」と言ったとしても、「政治とはこうあるべき」なんてことは決してなく、「政治とはこうあるべきだ、と考える人もいる」というだけです。そう捉えてほしいのです。

たくさんの人々がさまざまな立場からさまざまなことを言います。そのほとんどすべては、それぞれの人にとっての正しさでしかないということを、忘れないでください。

色々な情報を見聞きするなかで、「なるほど」「変だな」と感じると思います。その「感じ」を手掛かりに、「(そう感じる)これはどういうことなのか」と「どうしてそう感じるのか」を、時間をかけてゆっくりとひもといてみてください。それが「考える」ということです。

もし、情報を見ても何も感じることなどない、という人がいたとして、それはおかしなことではないと思います。何かを感じる日が、いつか来るかもしれません。

ただ、何も感じなかったとしても、ある情報を疑いなく信じ込むことだけは、決してしないように気をつけてください。「そういう話もあるのか、でもほんとうなのかな」くらいの気持ちで眺めるようにしてください。何が「ほんとうか」が気になり始めたら、それは立派に「感じる」ようになった、ということです。どうか、あなたの「感じる」を「考える」にしていってください。

こんなにも「疑わずに思いこむ」ことを危険視するのは、そのような癖がついてしまうと、人生がめちゃくちゃになってしまうリスクが跳ね上がるからです。

何を信じるか。何を善とし悪とするか。生きている限り、わたしたちは常に判断を迫られ続け、その判断が自分の人生を作ります。何を選ぶかは、すべて自分で選ぶことができるのです。あらゆる情報が玉石混交となるなか、自分にとってほんとうに正しいことを選ぶためには、考えるしかありません。

「疑わずに思い込む」は「考える」の真反対にあり、それはすなわち、他人の手に自分の人生をゆだねてしまうようなものです。誰かが言っていることや、なんとなくそこにあるように思われる風潮のようなものは、誰かによって作られたものでしかなく、それを選ぶか、受け入れるかは、あなたが自由に決めてください。

「疑わずに思い込む」人をつけ狙って悪意ある情報を発信する悪い奴らが、この世にはたくさんいます。善意による誤った情報も、同じくらい氾濫しています。どうかそういうものに足元をすくわれないよう、「疑って思いこまない」をいつも忘れないでください。

少し脱線しますが、「疑わずに思いこむ」の危うさは、あなたがあなた自身の人生を創造できなくなってしまうところにもあります。先ほどお話ししたように、自分にとってほんとうに正しいことや望ましいことを選ぶことで、あなたは人生をどこまでも創造し続けることができます。創造の当事者からおりることは、生きている限り不可能です。

けれども、誰かの言うことや、なんとなくそう決まっているように見えるルールや風潮などを「疑わずに思い込む」と、当事者であるあなたにとって、ほんとうは正しくないことや望ましくないことも受け入れなくてはならなくなります。たとえば、何歳からだって夢を目指していいし、嫌いなものをある日突然好きになったっていいはずなのに、「そんなことは無理だ」「現実を見なさい」「それはありえない、普通じゃない」といった声を信じ込んでしまうと、そのとたん、当事者であるあなたは、自分の人生を創造する力を失います。それは、あなたにとってほんとうに正しく、望ましいことでしょうか。

人生を自分にとって善きものにするためには、そもそも、自分にとって善いこととは何かを、あなた自身が知らなくてはなりません。そのためには、考えるしかないのです。

絶対の正しさを追い求めることは難しくとも、いま、ここの最適解はどうにか求められるはずです。そのとき最もよいこととは何か、それは誰にとって、なぜ、どうよいのか。その「よい」が解決できていないことは何か。その未解決の課題をも解決できる「さらによい」はどこにあるのか。それを探し続けることを、どうかやめないでください。誰かが大声で叫ぶ「正しさ」に、惑わされないでください。受け取ったものを疑うことなく信じこんだ瞬間、人生はあなたの手から誰かに奪われてしまいます。考えることだけが、あなたの道を作ります。そのことを、どうか覚えていてください。