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作文・読書感想文の書き方 ~鹿の巻~

夏ですね。夏休みはどうして読書感想文を書かされるのでしょうね。普段から10代の人々に文章を教えているので、備忘録を兼ねて「読書感想文の書き方」をまとめてみました。

 

〇 作文の話

・読書感想文=「作文」の一種

・では「作文」とは?

→ 自分が経験したこと(読んだ、行った、食べた、取り組んだ、関係したetc)について、読み手にそれを伝える文章。

… つまり読書感想文とは、「自分の”読む(読んだ)経験”について書く」文章である。

・では、「よい作文」とは?

→ いろいろ定義できるが、個人的には

― 読み手がおもしろいと感じられる文章

― 書き手が「自分の伝えたいことを伝えられた」という手ごたえを感じられる文章

と考えます。

・「感想文」とは?

→ それに触れたことで自分の心のなかに起こった動きについて書く文章。

EX)「金閣寺をきれいだと感じた」「運動会で隣のクラスに負けて悔しかった」「主人公の強い意志と不屈の精神力に自分も励まされた」などは「心の動き」ですね。

・では、「よい感想文」とは?

→ これもいろいろ定義できるが、個人的には

― 読み手が、書き手の心の動きに共鳴、納得、驚きやおもしろさを覚える文章

― 書き手が、心のうちを率直に表せたと感じる文章

と考えます。

 

〇 読書感想文の書き方

・読書感想文すなわち作文には、目指すべきゴールがあるわけではないので、基本的には上記の考えに則り、内容、文体含めて自由に書いてOK。

・しかし、「自由に書いてOK」が不自由に感じられるのであれば、以下を手掛かりに内容や構成を考えてみると、アイデアが浮かびやすくなる。

・先ほども述べた通り、読書感想文は「読む(読んだ)経験」について書く文章であり、本を全部読まずとも書いてよい。短くても、「自分の読書経験」について書くことが大切。

 

1.その本から得た発見と、読む前と読んだ後の変化について語る

・本を読むということは、それまで知らなかったことを知ること、すなわち「発見」の経験と言える。「知らなかったこと」とは、知識だけでなく、物事のとらえ方や感じ方、他人の経験なども含む。

・そして「発見」は「変化」につながる。

・その本を通してどんな発見を得たのか、まずは書き出してみよう。その際、「何がどういうことだとわかった」「何についてどういうことがわかった」という書き方をすると、あとで感想文の材料として使いやすい。

・そしてそれらの発見に対し「へえ~そうなんだ」「なるほど、そういう考え方があるのか」と感じたら、それが自分の何か身近なことにも通じないか、考えてみよう。

・これは読書の醍醐味でもあるが、その本を通して得た発見が、自分の普段の暮らしにも通じていたり、その発見を応用できたりすると、それはとても愉快だ。

・だから、そのことについて少し考えてみよう。

・ポイントは、

- どんな発見が自分を変えたのか

- 変化する前と後はそれぞれどのような状態であるか

- 「自分のこと」にどう結び付けられるか

について具体的に書くこと。「変わる」ということは、変わる前と変わった後の両方の状態があるということなので、その両方を示して初めて「変わった」ということが説得力を持って読み手に伝えられる。

・ただし、「変化」について「今まで知らなかったことを知れた」だけで終わらせてしまうと感想文にはならないので注意しよう。

 

2.その本の魅力について語る

・読んだ本が気に入った場合、その本の魅力について語るのは、とても楽しい経験になる。

・特におもしろく感じられた部分や、心に響いてきた部分は、その部分の文章を一度まるっとノートに書き写してみてもよい。なぜそれが自分の心を揺らしたのか、シンプルな言葉でよいので、書き出してみよう。

・あるいは特定の部分を切り取らずとも、その文章が構築する世界のうつくしさやあざやかさに魅せられたり、文章全体からほとばしる熱量に刺激されたり、ということもあるだろう。

・魅力について語る際に大切なのは、心が震えた「自分」にもまなざしを向けること。

・「”なぜ”自分は心を動かされたのか」という、「感じる自分」や「そう感じた理由」についても、文章で読み手に伝える必要がある。

・この「感じる側の自分」についても説明しないと、「おもしろかった」「感動した」「すごかった」という平らな感想文になってしまうので、注意すること。

 

3.その本に対する違和感やおもしろくなさについて語る

・読む本すべてがおもしろい人生というのは、つまらない人生だ。おもしろくない本に行きあたるからこそ、おもしろい本の価値がより一層感じられる。

・…なんていう講釈はいいとして、「この本に書いてあることには、なんだか違和感を覚えるな」「あまりおもしろいと思えないな」と感じたときは、素直にそう書いてよい。

・大切なのは、先ほどと同じく、「どんなところに」「なぜ」そう感じるのかについて読み手に説明すること。

・もうひとつ大切なのは、違和感や引っかかりを覚えたことに対して、「自分はどう感じる・思う・考えるのか」を掘り下げてみること。そして、その「感じた・思った・考えたこと」を、一つひとつ丁寧に説明しよう。

・「つまらないな」と感じた物語であれば、どうしたらもっとおもしろくなるかを提案するのもよい。

・そこからさらに、「つまらない物語の特徴」と「おもしろい物語の特徴」をそれぞれ考えて説明できると、読みものとしておもしろいより感想文になる。

 

〇 読書感想文を書く際の注意点

*本の紹介文にしないこと

・読書感想文は「自分の読書体験について述べる文章」であって「本の紹介文」ではない。

・「何が書かれていたか」に字数を割くのではなく、「どんな経験をしたのか」に字数を割こう。

 

*「ひとつ」「多くてもふたつ」に絞ること。

・取り上げる内容が多すぎると、一つひとつの内容が薄くなるだけでなく、書いているうちに考えが混ざって頭の中がごちゃごちゃになり、書くこと自体イヤになってしまうことがある。

・なので、文章の中に「いいな」と思える部分がたくさんあったとしても、まずはどれかひとつに絞ろう。

・ひとつについて語りつくして、それでも字数に余裕があるようなら、もうひとつ取り上げよう。

 

*あえてポジティブな感想を書こうとしないこと

・「おもしろかった」「感動した」のような、ポジティブな感想を書くのが感想文だと思っている人は多い。

・しかしそればかりが感想ではない。「つまらなかった」「全然共感できなかった」と思うことも、そう書くことも、まったく問題ない。むしろ、ネガティブな読了感に対して、「なぜそう感じたのか」を説明できれば、作文として非常におもしろいものに仕上がることが多い。ただし、理由を説明せずに「ここがつまらない」「あそこがつまらない」と繰り返すのは感想文としての質が低くなるので、よしておこう。

・「良いことを言わなきゃ」という意識は取り外す。原稿用紙のうえでは、すべてが許され、歓迎されている。

 

*「書けない」という気持ちは即座に打ち消すこと

・「自分は文章を書けない」「自分は書くことが苦手だ」という思いこみが、文章を書く上での一番高い壁だ。

・「書けない」という気持ちが少しでも顔をのぞかせたら、その瞬間にその気持ちを全部吹き飛ばして、「書ける書ける書けるぞー!」と大声を出し、ペンを握り、なんでもいいから一文字目を書いてみて。ばかみたい、と思うかもしれないけれど、これでほんとうに書けるようになるから。

 

〇 よくある質問・相談

・あらすじって書かなきゃダメ?

→ あらすじは、感想文の読み手に話の筋を伝えることと、「わたしはこの本をちゃんと読みました」と先生にアピールすることが目的であるので、こと細かに書く必要はない。「〇〇について書かれている本だ」程度でもよい。内容の一部を具体的に内容を説明することで自分の感想をより鮮明に読み手に伝えられるのであれば、そこを切り取って少し詳しく説明しよう。

・起承転結って守らなきゃダメ?

→ まったくそんなことはない。冒頭の通り、作文とは「読み手が読んでおもしろいもの」であることが大切であり、起承転結はその「おもしろみ」を演出するひとつの手段に過ぎない。個人的には「起、転、転転転!…結と見せかけさらに転、承、承、結」みたいな文章もおもしろいと思う。「起承転結」にはとらわれなくてよい。

・文章を書くのがすごく苦手なんだけど…。

→ まずは原稿用紙の半分、200字で「言いたいことだけ好き勝手言う(書く)」練習から始めよう。これを5回くらいやると、400字~800字(原稿用紙1~2枚分)がかなり書きやすくなる。大切なのは、この200字作文に取り組む際は、とにかく何も気にせず、書きたいことだけを書くこと。文法や誤字脱字も気にしなくてよい。ただ言いたいことだけを書く。本についての話ではなく、友達のことや好きな遊びのことについてでもよい。

・一行目が書き出せない。

→ 「この本は、〇〇について書かれた本だ」から始めてみよう。あらすじを続けてもよいし、感想の本題に入ってもよい。本題に入る場合は、以下のように続けてみよう。

 

1.で書く場合

「この本はわたしに~~~ということを教えてくれた」

「この本はわたしの〇〇についての見方(感じ方・捉え方)を変えてくれた」

などと続けてみよう。

そして、「発見」や「何がどう変わったか」の説明に移ろう。

 

2.で書く場合

「この本の最大の魅力は…」

「わたしがこの本の中で最も気に入ったところは…」

などと続けてみよう。

あとは1.と同じく説明に移ろう。

 

3.で書く場合

「この本は、正直なところ、これまで読んだ本の中で一番目か二番目につまらなかった」

「この本で筆者は〇〇〇と言っているが、わたしは、XXXではないか、と思った」

などと続けてみよう。

そして1.2.と同じく説明に移ろう。

 

以上、超・個人的な作文・読書感想文の書き方の備忘録でした。春夏秋冬本はおいしいが、夏という季節をきっかけに感想文を書く経験ができるのはいいことだと思う。児童生徒のみんな、がんばってください。