きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

diary_20171207

 

近ごろ我が家に新入りがやってきた。小柄なアイロン。

さっそく仕事に着ていくシャツに使ってみる。あたたまるのが早く、小回りがきくしデザインも愛らしくていい。でも何より一番気に入ったのは、電源を切ったあと、呼吸するみたいに数秒に一度蒸気をしずかに吐き出すところ。やがて数秒が十数秒になって、数十秒になって、10分くらいしたら完全に静かになった。ベランダの窓から差し込む陽にあてられて数秒ごとに「しゅーっ」とやるアイロンを見ていると、家に犬が一匹増えたような感じがする。

 

アイロンが冷めるのを待つあいだ、ウールの白いセーターを洗う。

セーターの手洗いをするとき、ものすごく傷つきやすい水びたしの神聖な生きものの世話をしているような気持ちになる。流水に当てるとその箇所が伸びてしまう。押し洗いの力加減をわずかにでも間違えるとすぐ縮む。まかり間違えても決して力を加えて絞ってはいけない。とにかくウールのセーターは繊細で傷つきやすく、これだけ気をつけていても一度洗えば洗う前のセーターとはまるで別の服のように風合いが変わる。水を含んで重たく、水滴がひっきりなしに滴るこれをたいへん丁寧に脱水にかけ、供物のようにうやうやしく平干しする。おそらく生活のなかでこんなに気を遣うのは、ウールのセーターを洗って干すときくらいしかない。豆腐を掌のうえで切るときでさえこんなに気は遣わない。

 

こういうある種の「めんどくさいこと」をほんのすこし生活に紛れ込ませておくのはけっこういいことだと思う、ぜんぜん嫌いじゃない。本当はすべてに対してそれなりに丁寧でありたいけれど、あたりまえに毎日が過ぎてくれるので忘れがちになる。ウールのセーターを洗うといつもその日は他の動作までいつもより丁寧になれるので、これからも2週間に一度くらいはやつを手洗いをしたい。