きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

晩秋の九州まんなか旅 阿蘇-くじゅう-熊本-上天草

大きな飴玉を口の中でゆっくりころがすように、何度も思い出したい旅。

旅程は

1日目:熊本空港in→阿蘇→くじゅう連山の麓

2日目:くじゅう連山→熊本市

3日目:熊本市内→宇城

4日目:宇城→上天草→熊本空港out

今回の旅は前半登山、後半観光。天気によく恵まれた4日間だった。

阿蘇で登山、くじゅうで登山

GOGO阿蘇

初日は空港から車で阿蘇へ。「阿蘇山」という名は有名だが、阿蘇山という山がひとつあるのではなく、阿蘇連山という5つの山々を総称して阿蘇山と呼ぶ。

登ったのは、阿蘇連山の中心にある中岳から東側の烏帽子岳杵島岳

うつくしきかな烏帽子岳

杵島岳をゆく

烏帽子岳の麓は草千里が広がっていて、馬が放牧されている。運が良ければそばまで寄れる。柵などは一切ない。近くで見るとけっこうな迫力。

てんてんと馬たち

阿蘇連山をおりて、その日のうちに大分のくじゅう連山へ。初日の夜は久住山の麓にある山小屋に泊まった。

ザ・山のめぐみ

ひとつひとつに名前が乗って出てくる山菜天ぷらいとおかし

次の日は6時に宿を出て登山口へ。東京は6時前で少し明るいので、そのつもりで5時過ぎに起きたら、あまりに真っ暗でびっくりした。九州の日の出はすでに6時半をまわる。一年のなかで日が短くなっていくこの時期の早朝がたまらなく好き。さみしくて、うつくしい。

おはようくじゅう

くじゅう連山は、熊本から大分までひとつづきになっている阿蘇くじゅう国立公園の中心に位置する。国立公園どころか、くじゅう連山もめちゃくちゃ広いので、一日ではとても歩ききれない。

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月が

今回は阿蘇側の沓掛山-星生山-久住山-中岳の縦走。その奥の稲星山にも足を伸ばしたかったが、とにかく稜線が気持ちよく、予定を変更し4座をゆっくり歩くことに。秋の風と光よ!

おべんと

ヒュッテのおばちゃんが作ったおにぎりのうまいのなんの

紅葉はもうほとんど終わりかけ。たしかにこの一面が赤や黄色に染まっていたらさぞすごかろうなと思うが、もうほとんど燃え尽くした山肌に、最後の命とばかりに残る紅葉も好き。この季節にしか見られない山。

また春に

おいしいごはん、おいしいコーヒー

ウマいぜ馬料理

翠ジンソーダバリエーション

これで1,800円てどういうこと

「九州はごはんがおいしい」とよく聞くが、熊本のごはんはサイコー。これまで福岡や大分に旅行したときもそれなりにおいしいものを食べたと思っていたが、熊本ごはんは記憶をずばずば上書きしてくるおいしさだった。

物語が添えられることでおいしさが2割増す(単純)

熊本市内でゲストハウスに泊まった際、コーヒー好きのご主人にいくつか市内のオススメカフェを紹介いただき、そのうちの1軒Gluck Coffee Spotへ。しっかりおいしい。旅先で一期一会のおいしいコーヒーに出合えることは幸いである。

ゲストハウスのご主人が淹れてくださったコーヒーもとても美味でした
(写真忘れた…)

同じくご主人おすすめのサンドイッチ屋さん。マフィンもめちゃおいしかった

あと、途中立ち寄った道の駅にいけすがあって、イカやら魚やらがペロペロ泳いでてびっくりした。熊本、はかりしれない。

そして安い

熊本城とか、プレモル工場とか

シャキーン

2016年の熊本地震で外壁が崩れ落ちてしまった熊本城。まだ完璧な修繕は終わっていないが、お城の外観と中はとてもきれいになっていた。入場(入城?)料800円。

事前に見たレビューで、「熊本城の中身はすっかり変わってしまった。古き良き城のない層は見る影もなく、単なる展示になってしまい嘆かわしい」という意見があり、どんなもんかなと思いつつ行ってみたが、個人的にはとてもよかった。

たしかに当時の内部の様子をじかに見られないのは少し残念だったけれど、震災前の内部も復元ではあったわけで。それよりも、800円でこの資料の充実や設備の充実具合は…!という感動のほうが大きかった。1階から4階にかけて、築城時の様子や加藤家、細川家のこと、近現代の熊本城…ととにかくすごいボリューム。加藤清正の天才的な城造りのセンス、彼の描いた治水と防御を兼ね備えた城下町計画や、当時の町づくりが今も熊本市内の礎になっていることなどを知れて、たいへんおもしろかった。おもしろすぎて内部の写真は忘れました…。

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熊本城のあとはサントリー九州熊本工場へ。プレモルがひたすら製造され続けている。工場の外に並んでいたでっかいタンク一本には、一人の人間が一日一缶飲むと計算しておよそ1400年分くらいのビールが貯められているらしい(うろ覚え)

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工場見学は予約制のツアー。内部は見られるものの、トークはけっこうPR寄りで、正直少し残念。プレモルの製造工程の詳しいところや、ビールの旨味が発生する機序についてもっと具体的に知りたかった。

とはいえ皆さんのお目当ては見学後のビール試飲ですよね。わたくしめもしっかりいただきました。

運転手の夫はオールフリー(ほんとうにすみませんでした)

試飲時間は15分くらいで、最大3杯までおかわりできる。最高の状態のグラスにプロが注いでくれるので完璧のおしいさ。15分でこの量3杯飲めるかいなと思いつつ1杯目を味わっていたら、周りの人たちがあっという間に3杯コンプリートしていておそろしかった。2杯目でマスタードリームをいただいてみたが、個人的にはプレモルのほうが軽やかで好きな味だった。

チェイサーを入れつつマスタードリーム。どっしりした味わい

そういえば、工場見学の前に熊本市内にある江津湖公園にも立ち寄った。ここもゲストハウスのオーナーさんのオススメ。大きい池、きらきらの日差し、うまいサンドイッチ。何も言うことなし。SUPをやっている人や、何かを捕まえる子どもたちでにぎわっていた。街のなかに大きな水のある風景はよい。

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島民よりねこが多い島、湯島

最終日。宇城に泊まり、早朝から上天草に移動。江樋戸港から船に30分乗ると、湯島につく。ここは島民よりねこの数が多いことで有名らしい。

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港到着即ねこ。そこらじゅうねこ。ねこが団子になったり好き勝手伸びたりしている。人をまったく警戒しないどころか、見つけると遠くから速足で駆け寄ってくる。とはいえ餌をねだったりはしない。お行儀がよく、かわいがられるすべをよく心得ている。

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島のカフェのおねえさんいわく、すべてのねこに名前がついているとのこと。島民はだいたい全部のねこを把握しているらしい(ほんとに?)

湯島には根強いファンが多く、中には関東圏から定期的に通ってきて自分の推しねこに会いに来る人もいるという。おそるべきねこパワー。

ねこ派の夫、炎天下で飽きもせずねこを愛でる

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ねこもいいけれど、個人的には湯島の海が好きになった。凪いでいる有明の海。島には灯台がひとつ。その昔は灯台守とその家族が住んで、夜通し海を照らしたという。

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ジ

湯島は、200人ほどの島民が住むふつうの生活の場。ねこたちは観賞用でも愛玩動物でもなく、この島の暮らしの景色である。

 

どこまでいけるの長部田海床路

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ふたたび船に乗って本土に引き返し、熊本空港方面へ。長部田海床路はその途中にある。

ここは潮の満ち引きによって道が消えたり現れたりする。行ったときは満潮から干潮に向かうタイミングで、1枚目を撮って30分くらい経ってから撮ったのが2枚目。たった30分なのに、潮が引いているのがわかる。

ただ電信柱と道が続いているだけの場所だからか、観光客たちは写真を撮って早々にいなくなってしまった。けれども、ここの波の音がなんだかとても心地よく、夢のなかにいるみたいで、夫とソフトクリーム片手にふたりでしばらく海を眺めていた。干潮になったら、この道はどこまで続いているんだろう。

写真のこと

今回はねこの島とか海床路とか、いわゆる「ばえる」ところにたくさん行ったけれど、いままでの旅よりも写真はそれほど多く撮らなかった。でも、それで全然いいと思う。

写真映えする(とされる)ところで写真を撮ることと、自分の好きな写真を撮ることはまったくちがう。行ったときの気持ちを思い出せるような、あるいは、何度でも思い出したくなるような、そんな写真を撮るのが好きだ。ここにあげたのは、決して映える写真ばかりではないが、わたしにとってはそういう大切なもの。

夫のこと

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ここ2年くらい、夫とよく遠出をする。夫と旅をするのが好きだ。彼は特別旅慣れた人というわけではないけれど、どこにいても夫は夫のままなので、この人とならどこまでも行けると思える。行って特別何をするわけでもなく、ただ一緒にいるだけでいい。そういう人と生きているうちに出会って時間をわかちあえることは、このうえない幸福だと思う。

旅のこと

空港ラーメンは値段は高くて味は普通なのに、どうしようもなくうまい

この頃、ようやく時間と体力とお金のバランスがちょうどいい感じになりつつある。20代初めの頃のような時間や体力はないので、夜行バスに乗ってむちゃくちゃな工程で山に登るような真似はできなくなった。けれども体力が有り余らなくなった分、ゆっくり旅を楽しめるようになったし、お金にも少し余裕ができたから、飛行機や新幹線で行ったことのない遠くまで行けるようになった。貧乏旅もいまの旅も楽しい。一歩ずつ、そのときにしか楽しめない旅ができていると思う。

しかも大変幸いなことに、健康である。身体という、不便で、わがままで、けれどもすばらしいものを背負って生きざるを得ないのだから、行きたいときに行きたいところへ行き、食べたいときに食べたいものを食べ、触れたいものに触れ尽くしておきたい。今際の際に「あー楽しかった。もうおなかいっぱいです」と呟いて三途の川に飛び込むのが、わたしの当面の目標である。

また旅に出ようね(撮影:夫)