きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

意志を持って消す火を選べ

さらば2023!

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4つのコンロ理論。それぞれのコンロに点る火は、家族、友人、健康、仕事。成功するためには1つの火を、もっと成功するためには2つの火を消す必要があるという。

今年新しく始めた仕事は、ほんとうにおもしろい。性に合っているし、これまであまり表に出してこなかった自分の一面が受け容れられ、歓迎され、成果にもつながっている。同僚や先輩たちにもいい人が多く、端的に居心地がいい。

すると自然と仕事に時間を振るようになって、友人関係や趣味の活動(「コンロ」にはないけれど、映画を観たり、本を読んだり、展示に行ったり)が知らず知らずのうちに後回しになった。夜は疲れ果ててすぐに寝て、朝は早起きして走りに出るので、夫とゆっくり過ごす時間も減った。ここ最近はご飯もあまり作れなくなって、冷蔵庫にあるものをパソコンの前でかじるような生活をしている。休日は回復と家事で手いっぱいだから、山にもあまり登らなくなって、その代わりときどき少し長い旅行をするようになった。あらゆることへの時間の使い方がこれまで通りではいかなくなった2023年。

仕事が楽しく日々が充実しているのは幸いなことだけれど、そろそろ「消す火」を考えるべき頃合いだ、と思った。

二つ反省がある。ひとつは、時間と体力気力を多くのものに等しく分配しようとしたこと。それらは有限で、複数のものに等分に割り振ろうとすると全部中途半端になって、不完全燃焼感が残る。

もうひとつは、仕事のおもしろさと忙しさにかまけて、どの火をつけてどの火を消すか、十分に検討しないままでいたこと。おもしろくて忙しいと、得てして「それをしたくてやっている」と思い込みがちだが、実はそうではない。それらは感情や状態であって、「いまはこれに力を注ごう」という意志ではない。意志を決めないまま、なし崩し的におもしろさと忙しさに毒されていくと(困ったことに、特に仕事におけるおもしろさと忙しさには強い中毒性がある)、じわじわと人生が侵食されて、いつか大切なものを壊してしまう気がする。

「気づいたらこの火力が全開」「気づいたらあっちの火が消えそうになっている」という他律的な状況には、言い訳や自己嫌悪がついてまわる。「もっと時間があれば」「もっとうまいやり方があれば」と思いながら過ごす日々は据わりが悪いし、不誠実だ。それがよくわかった一年、そして20代最後の年だった。

逆に考えると、犠牲にするものを決めれば、手のうちにあるものに全力を注げる。欲に全力を懸けるための捨て身。あらゆる可能性に向かって転がり続けた20代を経て、「それ」一点をめがけて振りきる30代を過ごしたい、と思うようになった。

だから、自ら火を消すしかない。「意志を持って消す火を選ぶ」には勇気がいる。すでに手にしているものはすべて大切に思えて、どれも消せない気がしてしまう。けれどもこんなやり方では、もう満足できない。だから消す。そうして飛びこむ。この空腹感と覚悟を、2023年の成長ということにしたい。

さて、2024年、どうしよう? まずは何を手放そう? 10年後、来年の答え合わせをしたい。その決意を固めるための一年だった2023年、ありがとう。さらば! きっと死ぬまで忘れない一年になった。