きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

夏の北海道旅の記録 登別-洞爺湖-ニセコ-積丹-小樽

夏の北海道。文字だけでこれよりわくわくする旅ってなかなかない。

1日目:新千歳→支笏湖→登別→虎杖浜

2日目:虎杖浜洞爺湖ニセコ

3日目:ニセコ積丹→小樽

4日目:小樽→江別→新千歳

〇海(地球岬神威岬

地球岬

曇っていたせいもあるが、空と海の境目がわからなくなるような太平洋。風があるのに静かな景色。

地球岬」はアイヌ語の「ポロ・チケウェ(チケプ)」がもともと正しい名前だったのだそう。「ポロ」は「大きい」、「チケウェ」は「親である」とか「断崖」という意味で、「チケウェ」の音が「チキウ」に転じて「地球岬」となったらしい。つまり「地球」は完全に後付けで、何の意味もない。「地球岬」と名付けることでアイヌ語のもとの名付けが脱色され、観光名所感があるだけの名前になってしまっていることが残念だった。

神威岬

神威岬は明るい。暑いのに風が涼やかだから、どこまでも歩いて行ける気がする。灯台までの遠さすらうれしい。

神威岬はかつて、非常に急峻な山道の岬で、灯台守をする人々の暮らしは厳しいものだったという。もともとこのあたりの海一帯が荒れやすく、海難事故が絶えなかったらしい。よく晴れた日のこんな眺めからは想像もできない。

〇湖・沼(支笏湖倶知安湖、洞爺湖、神仙沼)

支笏湖

支笏湖倶知安湖は正直あまり印象に残っていない。おっきいな~という感想。水は澄んでいるし眺めはいいのだけど、なんだか平らで、絵みたいだった。

洞爺湖

洞爺湖をぐるっと3/4周くらいしてみたが、「とうや水の駅」から眺める景色が一番好きだった。洞爺湖は一周40キロあるそうで、山手線は一周35キロだから、つまりこの湖のなかに山手の内側はすっぽりおさまることになる。

水の駅とは真反対側だけど、洞爺湖のビジターセンター(火山科学館)はめちゃくちゃおもしろいのでおすすめ。湖の成り立ち、湖水の種類、岩石、樹木、鳥、なんでも解説されている。触れる資料も豊富。半日居られる。

神仙沼

神仙沼はこの旅で一番行ってよかったところ。山で、森で、湿原で、好きな空気がぜんぶあった。

 夫とほとりでしばし放心。どれくらい居たかわからなくなるくらい、時間がゆっくり流れる。ただ風の音を聞いたり、水草が揺れているのやとんぼが行ったり来たりしているのを見たりするだけで十分だった。

朝イチで行ったので人にほとんど会わなかったのもよかった。人に会わなさ過ぎて、熊鈴を持ってこなかったことをちょっと後悔した。

〇山(登別地獄谷、大湯沼、昭和新山

地獄谷はいくつかトレッキングルートがあって楽しかった。全部回っても2時間ちょっとあれば歩ききれる。ザ・火山。

個人的には、地獄谷から小さな山を一つ越えた先にある大湯沼が気に入った。青みがかった乳白色の湖面。全体がぼこぼこに沸騰して、湯気がもうもうとあがっている。地獄谷からあまり遠くないし、車でも10分ほどで来られるが、地獄谷より人がぐっと減る。

昭和新山は、洞爺湖に行く途中にたまたま看板を見つけて立ち寄り。ここ自体が観光スポットとして有名ということは知らなかったが、今回見た山のなかではいっとう好きだった。

昭和新山はかなり歴史の新しい山。1944年、ある日突然地面がぼこっと盛り上がり、噴火を起こしてできた。しかもその土地は、それまで人が家を建てたり畑をやったりして普通に暮らしていたところだというのだからびっくりした。43年の12月28日に地震が起きてから、44年の1月4日には集落の水が23℃から突然44℃になって、次の日には洞爺湖に巨大な渦巻きができて、土地が隆起して電車のレールがだめになり……と、かなりのスピード感で事態が進み、その後45年秋までにかけ、断続的に噴火や土地の隆起が続く。昭和新山ができたことで、集落がひとつ消滅してしまったという。当時ここに暮らしていた人たちのことを思うと、言葉がない。

〇牧場(ダチョウ牧場、アースドリーム角山牧場)

第2有島ダチョウ牧場

第2有島ダチョウ牧場。もともと行く予定じゃなかったけれど、ふきだし公園から宿に向かう途中にたまたま見つけて寄ってみたら、よかった。名前の通り、ダチョウしかいない。これだけの数の自由なダチョウを見たのは初めて。

ダチョウは恐竜によく似ている。 すぐに喧嘩したり交尾したり、忙しい鳥。

メモ1:売店にあるダチョウのたまごの黄身だけで生地を作ったどら焼きが最高においしかった。でっかくてやさしい味。

メモ2:ここはその昔、有島武郎とその父の所有する牧場だったらしい。有島文学が好きなので、意外なところで彼の名前を聞けてうれしかった。ニセコに縁のある人だったんですね。

アースドリーム角山牧場

アースドリーム角山牧場。小樽から札幌を抜けた先の、江別という場所にある。広い牧場にポニー放し飼い。ふれあいコーナーには、アルパカ、羊、ヤギ、猫、犬、馬、あとカメ。餌やり100円。禁止事項の張り紙は少なく、代わりに「人間側が注意せよ」という主旨の紙が貼られていて、大変よかった。

夫は牧場に行くと絶対うさぎキャバクラ(ふれあいコーナーのうさぎの抱っこ)に金を払う。どこの牧場も5分300円だが、だいたいゆるいので20分くらい抱ける。二人で行くと係の人は100%わたしにうさぎを渡そうとしてくるので、いつも「いえ、だっこするのは彼です」と訂正する。

一番思い出に残っているのは、ばんえい馬。大きくて、賢くて、やさしい。

〇宿・温泉(虎杖浜洞爺湖ニセコ

一日目は虎杖浜へ。温泉に好んで入るわけではない夫が、めずらしく「ここの温泉、良い温泉だね」と言っていたので、よかった。さっぱりするし、出たあとも身体がずっと温まる温泉。あとで調べたら「日本最高峰」と言う口コミが多くびっくりした。

ニセコの温泉はがっつり硫黄泉。そして激熱。草津那須の熱湯硫黄風呂が大好きな身としてはうれしい限り。ニセコ自体が大きな温泉郷でいろいろな泉質がある珍しい場所なので、好みに合わせて宿や日帰り入浴を選ぶのがいい。

最終日は小樽泊。ここだけ温泉じゃなかったが、ちょっと良いホテルだったこともあり、最高に居心地のいい大浴場だった。高いホテルはいいよ……。本当は運河の見えるホテルをとりたかったが、繁忙期の直前予約はすごい値段になっていたので断念。しかし運河のそばを1キロくらい歩いてみて、運河自体をそんなに気に入った!とは感じなかったので、別に運河のそばじゃなくてよかったなと思い直した。窓から海が見えたのはうれしかった。

メモ:番外編として、洞爺湖わかさいも本舗本店の外にある「手湯」がめちゃくちゃよかった。気持ちよすぎて一生手が抜けないかと思った。鳥の水飲み場か?というレベルに目立たない感じで置いてあるのだが、この手湯に出会えただけでわかさいも本舗本店に行った意味があった(気持ちよすぎて写真は撮り忘れた)。洞爺湖も温泉街なので、いつか泊まりに来たい。

〇ごはん

港町で2300円出して海鮮丼を食べた。別の町ではお寿司も食べた。たしかにおいしかった。が、香川でうどんを食べたときのほうが相対的な感動度合いは高かった気がする。東京でも、お金を出せばおいしいものは食べられる。そう考えると、2300円の海鮮丼や数千円のお寿司を食べるという体験において、「北海道だからこそ」という驚きがもっとあってほしかった、というのが正直なところ。その点、香川のうどんや前回の北海道旅のサフォークは、忘れがたい体験だった。

この旅で思い出に残っている食体験は、別の港町で食べたイタリアンと、バーのカクテル。

イタリアンは野菜も海鮮も新鮮だったのに加え、何よりシェフの腕がめちゃくちゃよかった。本当に何を食べてもおいしい。ただ、客の目の前でスタッフを叱り飛ばして嫌味をぶつける人だったので、入ったときは120%失敗したと思った。

バーは、地のお酒を使ったカクテルがたくさんあって楽しかった。リンゴが有名な余市のアップルブランデーを使ったカクテルをいただいたが、これ一杯で1時間はゆうに過ごせるほどにすばらしい経験だった。また行きたい。

〇その他

  • わかさいもは芋の餡が入っているとばかり思いこんでいたが、実は違って豆の餡に芋の筋に見立てた刻み昆布が入っているらしい。どうりでちょっとしょっぱい。その昔、北海道は風土からサツマイモが作るのが難しかったが、焼き芋を表現したいと考えた人が考案したらしい。
  • 朝、宿でNHKをつけていたら、ブルース・リーの特集が始まった。そのなかで、"Be water"という彼の言葉が紹介されていて、なぜかいまも耳に残っている。すでに何度も出会っているはずの言葉が、あるとき突然意味を持って自分のなかに種をまき根をおろすことは、いつだってどこでだってある。
  • 帰ってきたら植木鉢のバジルがしおしおになっていたが、夜に水をたっぷりやったら、次の日の朝にはしっかり元気を取り戻して背筋を伸ばして葉がはりはりになっていた。ハーブの生命力強し。

夫の空弁、1600円

支笏湖でSUPをしていた犬。犬も板に乗るの。

暮らしにカジュアルに河童が出てくる北の大地

ポロ・チケウェから神威岬に向かう途中にわたった大きい橋

この旅のベストショット、ポニーと夫

北海道のアジサイはこの時期に見頃らしい

うまい水のどばどば出るふきだし公園、高台の上までのぼるのがおすすめ

札幌味噌ラーメン(味、ふつう)

AIR DOのスープは最高。よくばってホタテスープとオニオンスープを両方もらう