きみのお祭り

死ぬまで盛り上がっていけ

くちなしの海を走る

毎日走る公園に、ここしばらくくちなしが咲きみだれている。それはもう、「みだれている」という表現しか見当たらないほどに。

夜なんか、走っていてくちなしゾーンに来ると、夢を見ているような気分になる。濃く甘い、抜けるような芳香が強く漂って、暗い闇のなか、白い花がそこかしこに浮かんでいる。ちょうどそのあたりは電灯が少ないので、人の背丈ほどの高さまで、花が宙を漂っているように見えるのだ。

5月から新しい仕事を始めて、住まいも新しくなって、気持ちも身体もずっとせわしい。だから、一日のうちに走る量が段違いに増えた。風が吹いても雨が降っても走ってしまう。振り切るようにして。走ることは、瞑想か逃走に似ている。

そこに、くちなしの海。

この先、いつか足腰が立たなくなって走れなくなる時が来たら、わたしはきっと、この6月のことを何度も思い出すだろう。濃い霧のようなくちなしの香りのなか、呼吸と、靴底が地面に触れ合うリズミカルな音だけが聞こえる、どこまでも暗いなかに白い花が、みだれるように浮かぶ光景を。毎日をいっぱいいっぱい生きて、感じたことや考えたことを、この海に何度も放り投げて走ったことを。